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さて、"The UNIX Time-Sharing System"1978年版の他の記述に目を向けましょう。
・over 600 installations have been put into service.
1978年8月までに600台にインストールされた。
これは、時期的にはバージョン6の末期であり、バージョン6までの累計台数としてはこれにもう少し台数が上乗せされたものと理解できるでしょう。
・a minimal system capable of running the software mentioned above can require as little as 96K bytes of core altogether.
最低でも96KBのメモリが必要であった。
続いて、バージョン6に付属する"The UNIX Time-Sharing System"の内容を見て行きます。
まず、Abstractで、1978年版に書かれている、
vi High degree of portability.
が、バージョン6付属のドキュメントにはありません。
この時点ではUNIXはPDP-11系列でしか動作していないわけですから、移植可能性に関する記述がないのは当然のことです。
・UNIX is a general-purpose, multi-user, interactive operating system for the Digital Equipment Corporation PDP-11/40, 11/45 and 11/70 computers.
PDP-11/40.45.70に対応している。
前に書いたように、このバージョン6の時点でPDP-11/70で実際に動作していたかは怪しい部分がありますが、この系統のPDP-11に対応するということなのでしょう。
・There have been three versions of UNIX. The earliest version (circa 1969-70) ran on the Digital Equipment Corporation PDP-7 and -9 computers. The second version ran on the unprotected PDP-11/20 computer. This paper describes only the PDP-11/40, /45 and /70 system, since it is more modern and many of the differences between it and older UNIX systems result from redesign of features found to be deficient or lacking.
1978年版と比べると、バージョンが3つに減っています。この一連の論文でいうバージョン4がないわけですから当然です。
・Since PDP-11 UNIX became operational in February, 1971, about 100 installations have been put into service;
バージョン6のドキュメントの時点で100台にインストールされていたわけですので、バージョン5までに100台インストールされたということになります。以前の表と見比べると、バージョン5だけで50台程度上積みされたことになります。
・The PDP-11/45 on which our UNIX installation is implemented is a 16-bit word (8-bit byte) computer with 112K bytes of core memory;
PDP-11/45上で実際に動作していることがわかります。
・a minimal system capable of running the software mentioned above can require as little as 64K bytes of core altogether.
メモリは最小で64KB必要であった。
次に"The UNIX Time-Sharing System"1974年版を見てみます。
・UNIX is a general-purpose, multi-user, interactive operating system for the Digital Equipment Corporation PDP-11/40 and 11/45 computers.
PDP-11/40. 45が対応機種である
・There have been three versions of UNIX. The earliest version (circa 1969-70) ran on the Digital Equipment Corporation PDP-7 and -9 computers. The second version ran on the unprotected PDP-11/20 computer. This paper describes only the PDP-11/40 and /45 system since it is more modern and many of the differences between it and older UNIX systems result from redesign of features found to be deficient or lacking.
バージョン6付属のドキュメントと比較するとPDP-11/70が外れています。1974年の時点でPDP-11/70は発売されていないので当然です。
・Since PDP-11 UNIX became operational in February 1971, about 40 installations have been put into service
累計で約40台にインストールされた。
この記述は、バージョン5の公式マニュアルに書かれている"above 50"と食い違っています。1974年版の"The UNIX Time-Sharing System"は1974年6月の出版であり、マニュアルと同時です。
この食い違いの理由としては
・もとになる1973年の報告集のデータがそのまま残っていて、73年10月時点でのインストール台数が40台以上である。
・ACMの論文集が出版されたのが1974年6月であるから、実際に執筆されたのはそれより前である。査読などのプロセスを考えると数か月は前であり、その時点でのデータが書かれている。
などが、あり得ます。
第一の可能性については、1973年の報告集の内容がわからないので、確定的な判断ができません。しかしながら、これ以降の"The UNIX Time-Sharing System"においては、インストール台数がきちんと修正されていることから、この論文だけ間違いと思うのは無理がある気がします。
となると、後者の可能性が出てきます。論文が書かれた日付がわからないので、何とも言えませんが、バージョン5公式マニュアルが書かれる数か月前とすれば10台くらいの差が出ても不自然ではありません。
いずれにせよ、この論文はバージョン5のドキュメントとして書かれたものではないので、この40台以上という記述は、本ブログでのインストール台数の数値としては使わないこととします。
・a minimal system capable of running the software mentioned above can require as little as 50K bytes of core altogether.
メモリは50KB必要である。
・but during the summer of 1973, it was rewritten in C. The size of the new system is about one third greater than the old.
これは、1978年版までのすべてに書かれていることですが、便宜上ここで取り上げました。1973年にUNIXをCで書き直すと、サイズが1/3ほど増えたと書かれています。つまりバージョン4はバージョン3の4/3倍のメモリが必要ということです。バージョン5で50KBですから、バージョン3では50*3/4≒38KB 以下ということになります。
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