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BIOSが吹っ飛んだ---Part2:復旧編
誤って、BIOSを吹き飛ばしてしまいました。
ことの次第は前編に書いてあります。
困った状況になりました。
一応データはすべてバックアップした直後ですので、データが失われるわけではありませんが、PCは使えません。
なんとかせねばなりません。
BIOSがおかしくなった場合によくあげられる対応手段としてCMOSクリアというものがあります。
CMOSというのは、BIOSの設定情報などを保存しておくRAMなのですが、PCの電源を切っても設定が消えないようにボタン電池で電源供給されるようになっているものです。
CMOSという言葉自体は、nMOSFETとpMOSFETを組み合わせた回路のことであり、電流駆動でなく電圧駆動になるので電力を消費しない回路ができるというものであり、本来は、メモリーという意味はありません。
ですので、ここでいうBIOS関係のCMOSとは、本来はBIOSのRAMと言うべきですが、パソコンの黎明期にBIOS情報を保存するために、ボタン電池で長時間使えるCMOSベースのRAMを採用し、CMOSで作られたRAMが当時は珍しかったことから、BIOSのRAMのことをCMOSと呼ぶようになったという経緯があるようです。
このCMOSに保存されているデータがおかしくなると、BIOSの動作がおかしくなることがあります。
そのような場合に、CMOSに保存されている情報を消してやると、BIOSが初期状態で起動できることになります。
これをCMOSクリアといいます。
実際には、ドライバー等でマザーボード上のある部分に触れて通電させたり、ボタン電池を抜いてしばらく待つなどします。
ですが、今の私の状況ではRAM上に保存されているデータがおかしくなったのではなく、ROM上に書かれているBIOSがおかしくなったのであり、CMOSクリアでは復旧できないはずです。
実際にやってみましたが、何の変化もありませんでした。
となると、ROM上に書かれているデータをPCを起動することなく書き換えるしかありません。
要は、FullTr-11のROMボードと本質的には同じで、ROMにBIOSというプログラムが書いてあるだけなのですから、何らかの手段で、ROMのデータを書き換えればよいわけです。
まずは、PCの中を見てBIOSが書き込んであるROMを探し出します。
この写真のチップがBIOSのようです。
全体に赤いペイントがありますが、おそらく、「ここにBIOSがありますよ」、という目印でしょう。
1ピンの箇所に青い丸が付いています。
1ピンの部分は表面が少しへこんでいるので青い丸がなくてもわかるはずですが、念のために印がつけてあるのでしょう。
見たところ普通の8ピンのSPI型のEEPROMのようです。
ただ、SOP型で基板に直付けされているので、簡単に取り出して書き換えるというわけにはいきません。
マザーボードによっては、BIOSチップの周辺にROMにアクセスできるSPIのピンが出ている場合があります。
これを使えば、ROMを基板から外さなくてもROMにデータを書き込めます。
が、残念ながらそのような端子は出ていません。
となれば、はんだごてを持ってROMを取り外すしかありません。
1.27mmピッチで少々やりにくいのですが、取り外しました。
次にデータを書き込むソフトが必要ですが、これにはSPIPGMというフリーソフトが使えます。
http://rayer.g6.cz/programm/programe.htmからダウンロードできます。
これは、古い25ピンのパラレルプリンタポートを使うので、少し古いパソコンが必要になります。
押入れの奥から古いPCを出してきました。もう使わないから捨ててもよかったのですが、まさかこんなケースで役に立つとは。
25ピンのソケットのうちで使用する部分を引き出し、下の写真のようなものを作ります。
そして、基板から取り出したROMの8pinをブレッドボードを経由して25ピンソケットと接続し、ソケットをPCにつないで、SPIPGMを使ってデータを書き込むという段取りです。
回路図はネット上にたくさん出ていますので、そのとおりにやれば書き込みができるはずです。
8ピンのROMの足に抵抗の線を切った残りの線をはんだ付けしていきます。
で、これにワニ口クリップをつけようとはんだ付けしたピンの1本のつながる線を横方向に曲げたところ、ROMの8番ピンがICの根元からぽっきりと折れてしまいました。
あぁぁぁぁ。
なかなかうまくいきません。
とりあえず、ピンが折れてしまったのと同じ型のROMを手に入れないといけません。
赤いペイントのせいで、表面の文字がすごく見えにくくなっていますが、角度を変え、光を当ててと何時間もかけてようやく読み取ることができました。
Microchip社のEEPROMのようです。
ですが、型番を調べると、国内では販売されていないようです。
海外から手に入れることにしました。
ROMが到着しました。
と軽く書きましたが、ROMの発注から到着までに、1か月以上かかっています。
手に入れたROMの8本の足に、抵抗の線を切ったものをはんだづけします。
そして、今度は慎重に線を曲げ、ブレッドボード経由でPCにつなぎます。
次に、書き込むBIOSのイメージが必要です。
別のノートPCを利用してBIOS更新ソフトをダウンロードしなおします。
メーカーのサイトからダウンロードした更新ソフトには更新ソフト本体に加えて、binという拡張子のファイルが含まれています。
これがBIOS本体である可能性が高いです。
ただ、ファイルのサイズが1MBと少し大きいのが気になります。
ファイルの中身を解析してみると、真のBIOS本体は300KBほどで、あとはBIOS画面のリソースであったり、exeファイルであったりします。
exeファイルがなぜこんなところにあるのかというと、ファイル名からみて、どうもこれがBIOS更新プログラムの中枢部分であるようです。
先に、今のWindowsではBIOSを使わないはずなのにどうしてブルースクリーンが出たのだろうと書きましたが、これで理由がわかりました。
BIOSの書き換えには、BIOSに書かれているexeファイルを取り出して利用するため、BIOSへのアクセスが必要になります。
このための命令がBIOSに用意されているはずで、Windows自体はBIOSを使わなくても、BIOS更新ソフトはBIOSを使うことになります。
そしてBIOSを呼び出しても正常に動かなかったのでブルースクリーンが出たのでしょう。
また、最初のBIOS更新の時には70%近くまでバーが進みましたが、2回目以降は全く進まなかった理由も理解できます。
最初のBIOS更新でBIOSに書かれているデータが破壊され、BIOSに含まれているBIOS更新プログラムの中枢が壊れたのでしょう。
その結果、2回目以降は、BIOSにアクセスすることができなくなったのでしょう。
BIOSをROMに書き込むサービスを提供しているところがあります。
そのサイトを見ると、BIOSの中に書き込みソフトが入っているタイプのものは対応できない場合があると書かれています。
私のBIOSの場合はまさにそのケースに該当します。
ですから、復旧は自力でやるしかありません。
基本的にROMにデータが書き込めないはずはないので、binファイルそのものを書き込むのではなく、何らかの変更をしてから書く必要があるのかもしれません。
たとえばファイル内にあるBIOS本体の書かれている位置を変える必要があるとかそういったことでしょうか。
でも、そんな面倒なことをする合理性は思いつきません。
また、ROMのサイズは1MBであり、binファイルのサイズとぴったり一致します。
なんだかわからないけれど、とにかくbinファイルをROMに書いてみることにしました。
ちなみに、更新ソフトをダウンロードするページには、赤い太字の英語でなにやら書いてあります。
これまで読まずにいたのですが、きちんと読んでみました。
そこには、「64bit版のWindowsではこのBIOS更新ソフトは動かない」と書いてありました。
そうです。これがすべての始まりだったのです。
私は64bit版のWindowsをインストールし、そのうえでBIOS更新ソフトを動かしてしまいました。
これまでBIOS更新に成功していたのは、32bit版のWindowsXPを使っていたからです。
64bit版ではBIOS更新ソフトは動かないと言っても、まったく動かないのではなく、中途半端に動作し、最後まで処理を終えることができないということなのでしょう。
いっそのこと、まったく動かなければよかったのですが。
もっとも、最後まで動かないことを、動かないと表現すること自体は間違ってはいません。
OSを認識して警告を出すような仕組みもなかったようです。
しかし、BIOS更新などは初心者のすることではないので、そのような警告はしないのでしょう。
要は、サイト上の説明をちゃんと読めということです。
これで、問題が発生した原因がすべて判明しました。
要はすべて自己責任です。
慢心が招いた結果です。
ちょっと気を緩めたがために、2か月近い時間が無駄になったのです。
ちょっと気をつけてサイトの説明を読めばよかったのに、それを怠ったがゆえに、復旧にその何百倍もの時間を費やすことになったのです。
徒然草109段の、高名の木登りの話が頭をぐるぐる駆け回ります。
有名な庭師が、弟子に木に登らせて枝の剪定などをさせ、降りてくるときに、もう少しで地上という時になって、気をつけるようにと声をかけたというアレです。
危険な状況にいるときには、人間は気をつけるので意外と間違いをおかさないが、これで大丈夫と安心したときに間違いが生じるという教訓です。
まさにその通りで、ROMを取り外して足にはんだ付けして書き換えてなどというプロセスでは細心の注意を払いますので、うまくいきますが、Windows上で更新ソフトを動かすなどという安直な場合には気の緩みが出るのです。
ううむ、昔の人の教訓はだてではない。
と感心している場合ではないのです。
とにかく、細心の注意を払って、書き込みを行います。
各種情報が正確に取れているかをチェックし、書き込み後に書き込みデータを何回も吸い出し、元のデータと
一致しているか慎重に確認します。
そして、マザーボード上にはんだ付けしなおします。
電源ON。
帰ってきました。BIOS画面。
Windows7も無事に起動しました。
メモリーも4GB認識されています
こうして私のPCが復活しました。
2か月近くかかった長い道のりでした。
多少の勉強にはなったかもしれませんが、有意義だったとは言えないですね。
もう二度とやりたくないものです。