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18切符は各駅停車にのみ乗れる切符です。
特急列車に乗る場合には、特急券のみを購入すればよいのではなく、別途乗車券を購入する必要があります。
つまり、18切符は特急列車に乗る場合には無効になります。
ただし、いくつか例外もあり、たとえば、青函トンネルの区間は各駅停車が走っていないため、蟹田と木古内の間だけ18切符のみで特急列車に乗ってよいことになっています。
この区間を実際に18切符で特急に乗ったことがありますが、それはまた別の機会に触れます。
この区間は来年に新函館までの新幹線が開通し、それと同時に在来線がなくなる予定であるため、もしかしたら、18切符だけで新幹線に乗れるようになるのではないかという希望を持つ人もいます。
このあたりの扱いがどうなるかは、開通が近づいてこないと何とも言えません。
ただ、私は過去に18切符だけで新幹線に乗った経験があります。
もちろん不正乗車などではありません。
ちなみに相当前の話ですので、今でも同じ状況かどうかは不明です。
18切符で新幹線に乗れた区間は、上越新幹線の浦佐-高崎間です。
10年ほど前に、新潟から関東に12月に移動する必要が生じました。
貧乏人としてはなるべく安く行きたいので、18切符を使うことにしました。
当日朝は、雪がちらほら降ってはいましたが、都市部では積もるということもなく、特段交通機関に問題が生じるようには見えませんでしたので、予定通り18切符で出発しました。
都市部から行くと、一度長岡に出て、そこで乗り換えて東京方向に向かうことになります。
長岡まで行ってみると、かなりの積雪で、東京方面に行く各駅停車は運休の予定ということでした。
18切符は原則として無保証ですので、仮に、悪天候などの理由で一部区間が不通になっても、代替交通手段提供や払い戻しなどの措置を受けられなくても文句は言えないことになっています。
ですが、現場の判断で何らかの措置が取られることもあり、一応聞いてみる価値はあります。
窓口で聞いてみると、高崎までの乗車券を買ってくれれば、新幹線の特急券なしで高崎まで行けるということでした。
各駅停車が走る在来線である上越線は地面の上に直接レールが敷いてあるため、積雪の影響が大きいのですが、上越新幹線はほとんどが高架とトンネル区間であるため、雪に強く、相当な大雪でも止まることはまずありません。
この日も、各駅停車は運行停止でも上越新幹線は全く問題なしという状況でした。
その新幹線に、乗車券だけを買ってくれれば、特急券を買わずに乗せてくれるというのです。
一見すると、18切符で移動する人に配慮しているように見えますが、実はそうではありません。
鉄道会社のルールでは、乗車券がある限り、会社側はいかなる手段を用いても目的地まで乗客を届ける義務を持ちます。
仮に在来線が運行停止になった場合、出発地が長岡で、目的地が高崎以遠であれば、特別な料金を徴収せずに新幹線に乗せる必要が生じます。
つまり、この措置は18切符とは全く無関係に通常のルールが適用されているにすぎません。
というわけで、18切符については一切の対応措置なしということです。
それはそれで18切符のルール通りなのですから、文句は言えません。
どうしようかと思っていると、東京方面に行く各駅停車が出発するというアナウンスが流れました。
急いでプラットフォームに行き、駅員さんに聞いてみると、終着駅まで行けるかどうかはわからないが、とりあえず出発するとのことでした。
乗ってみると高校生などが多く乗っています。
長岡周辺の地元の人の重要な交通手段であり、とりあえず運行する必要があったのでしょう。
電車は長岡周辺では比較的問題なく動いていました。
しかし数駅進んで、長岡出発から15分程度経ったあたりから、降雪がひどくなり、ノロノロ運転になります。
さらに数駅進むと電車が止まっていることが多くなり、止まっては少し進むの繰り返しになります。
除雪された雪が線路のすぐ横に積み上げられており、それが2メートル近くの高さになっています。
つまり、窓から外を見ても雪の壁というか氷の壁が目の前にあるだけであり、視界は完全にさえぎられています。
氷のトンネルをくぐっているという感じです。
そうこうして次の駅に着いたところで、電車は完全に止まってしまいました。
一番前の車両に乗っていたので、運転士が運行指令部と会話している声が聞こえてきます。
指令:「前のほうで除雪中です。しばらく待機していてください。どうぞ。」
運転士:「いつごろ動き出せそうでしょうか。どうぞ。」
指令:「何とも言えません。どうぞ。」
駅に停車したまま30分近く経過しましたが、動き出す気配はありません。
乗客たちは自分で電話をかけて駅まで車で迎えに来てもらっており、乗客数が少しずつ減っていきます。
また、指令から連絡が入ります。
指令:「ただ今除雪中です。乗客には車両から外に出ないように言ってください。」
運転士:「先のめども立たないのに、そんなことお客さんにどうやって言えってんですか(怒)!どうぞ!」
指令:「とにかく車両から出ないようにしてください。」
運転士:「お客さんは自分で判断して出て行っていますよ(怒)。どうぞ!」
指令:「そういうことがないようにしてください。」
運転士:「この先動けるかどうかも分からないのに、どう説明しろって言うんですか(怒)!どうぞ!」
運転士の怒声が聞こえています。運転士も頑張ってくれているのでしょう。
どれくらい待ったかわかりませんが、ノロノロと進みだし、また止まりして1駅進みました。
そこでまたしばらく待って、アナウンスが入りました。
「この二つ先の浦佐駅まで行きますが、そこで当列車は運行を打ち切ります。」
地元客はかなり減ってきており、地域輸送としての役目はだいたい果たしたようです。
その先はさらに雪が深いでしょうから、まあ妥当な判断でしょう。
とはいっても、東京まで行こうとしていた当方にとっては困った事態です。
新潟側に戻ろうにも戻る電車が出るかどうかわかりません。
少なくとも定時運行の電車は東京側からやってくるダイヤですので、それは当然運行停止です。
戻りの電車があるのかと車掌さんに聞いてみましたが、わからないとの返事でした。
車掌さんに判断できるものでもないのでしょう。
浦佐で降りて宿に泊まるか、そもそも宿があるのか、雪深い中どうやって宿まで行くのかなど、問題も多いです。
とにかく浦佐に着きました。
で、駅員さんにこの先に進めるのかと聞いたところ、「新幹線で行って下さい」との返事です。
浦佐駅は新幹線との接続駅なのです。
18切符で新幹線に乗れるのかと聞いたところ、「仕方ないね」とのことで、振替乗車票というものを渡してくれました。
これで高崎まで乗れるようです。
18切符なのに新幹線に乗せてくれるとは思わなかったので、ありがたい話です。
長岡では一切対応してくれなかったのにどうして浦佐では対応してくれたのかの理由は、おそらく、浦佐ではもはや新潟方面に引き返す手段すらなくなっており、完全に孤立状態であること、そこまで運行して乗客を連れてきたのは鉄道会社側の責任であるということだろうと思います。
ちなみに、このとき18切符で浦佐まで来て高崎まで振り替えてもらった同志が5人ほどいました。
こうして新幹線のホームに18切符だけでたどり着いたのですが、この浦佐という駅は乗降客が少ないため、ほとんどの新幹線が通過していきます。
次に浦佐駅に停まる電車は1時間ちょっと後という始末で、新幹線の駅と言っても到着する列車の頻度という意味ではローカル線の駅と変わりません。
それでも新幹線の駅の待合室は暖かくて快適でした。
1時間ちょっと待って新幹線に乗ると、あとは雪などものともせずに、あっという間に高崎に着きました。
さっきまでの苦労はなんだったのだろうという感じです。
新幹線には乗れたものの、浦佐駅に着くまでの電車の遅れと、浦佐駅での待ち時間などで、高崎に到着したのは、本来のダイヤ通りに各駅停車が運行されていた場合より遅くなっていました。
以上が18切符で新幹線に乗れた話の顛末です。
ネットで調べてみると、この区間で同じ経験をした人は結構いるようです。
こういうことがそれなりの頻度で発生しているのでしょう。
だからと言って、雪の時に必ず18切符で新幹線に乗れる保証はありません。
おそらく、どうしようもない状況にならない限り、つまり、別路線で別の目的地に行く選択肢が残っている限り、新幹線には乗せてくれない可能性のほうが高いと思います。
18切符とはそういう切符です。間違ってもゴネたりしてはいけません。