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MyCPU80のトランジスタ版が出るらしい

ある知人の方から、中日電工さんがMyCPU80と同じものをトランジスタだけで作るということを教えていただきました。
http://www.alles.or.jp/~thisida/のブログに詳細が書かれています。
こういう形で、多くの人がトランジスタだけでいろいろなものを作っていくのを見るのは、うれしい限りです。
Maker Faire 2014では、私はFullTr-11のリレー版を展示しましたが、時計をトランジスタで作っていた方がおられました。

で、中日電工さんのブログにFullTr-11のことがふれられていたので、一応コメントしておきます。

[Q]クロックが1KHzというのはショボイのではないか。
[A]実はクロックは1MHzにできます。しかし、そうすると円周率等の計算は一瞬で終わってしまい、動画的に面白くありません。
  1KHzのクロックにすると、円周率を4秒弱で計算するので、ちょうど良い感じになります。
  時間のかかる計算を行う場合には、クロックを上げるのもよい選択肢です。
[Q]レジスタが3個・命令セットが14個しかないのは、ショボイのではないか。
[A]むしろ、いかに少ないレジスタで、いかに少ない命令セットで意味のある計算を行わせるかが腕の見せ所と思って作りました。
  レジスタの数を増やすことは難しくありませんが、それで円周率等を計算してもチャレンジしたという感じがしない、少なくとも私はそう感じました。
  ちなみに、PDP-8がだいたい同じような感じでして、12bitであり、レジスタは3個、命令セットは8個です。(ただし命令セットは多機能なものがあるので実質的にはもっと多いです。)

で、中日電工さんがお作りになる、8080互換のMyCPU80をトランジスタだけでという製品は作れるのか、と言えば、「そんなに難しくもない」というのが実感です。
少し傲慢な言い方になるかも知れませんが、もし、私が、3ヶ月間集中できる環境があれば、作れそうな気がします。

ただ、少々面倒なのはメモリです。
プログラムを格納したり計算時に使うメモリを、ICを使わないでトランジスタで作ること自体は、回路的には難しくありませんが、ある程度意味のあるプログラムを動かそうとするならば、それなりのメモリ容量が必要になります。
これに要する部品数が大きいのです。
しかも、同じ回路の繰り返しなので、あまりチャレンジ精神も満たされない。
よって、「極限まで少ないメモリでやってやるぞ」、という発想になります。
ちなみに、UNIXの誕生時も、ケン・トンプソンたちは、同じような感覚で、メモリの使用量を減らすべく努力したそうです。

でも、メモリも含めてMyCPU80をトランジスタだけで作るのは、不可能ということでもない感じです。
2ヶ月くらいかけて、ひたすらはんだ付けを続ければ、メモリ16KBくらいはできそうです。
お金はかかりますが。
逆に言えば、CPU部分だけなら1ヶ月程度で作れるでしょう。

21世紀に、トランジスタでコンピュータを作った人は、世界中でも私だけだと思いますが、リレーで作っている人は何人かいます。
ZUSIEというものを北欧の方が作っていますし、ポートランド州立大学のPorter氏が作っているものもあります。
ですが、それらもメモリはICを使ってしまっているようです。
ZUSIEの製作記録には、メモリにICを使うという妥協をするにあたって葛藤があったことが書かれています。
ただ、「トランジスタで作る」からには、「メモリはICを使っちゃいます」などという妥協は、私は、できませんでした。

私が、Maker Faireで、いわば2番煎じともとられかねない、リレー式コンピュータを展示したのも、この点にあります。
Maker Faireで展示したリレーコンピュータは、メモリーもリレーで実現しています。
ICを全く使わずに、リレーでCPUもメモリも作成し、円周率を計算したのです。
もちろん、ICを使わないという私の側のこだわり以外に、ガチャガチャ音を出すのが展示に向いているという理由もあります。

ですから、中日電工さんにはぜひともお願いしたい。
メモリにはICを使っちゃいます、などというブザマなことだけはしないでほしい。
妥協せずに、堂々と、トランジスタだけですべてを作ってほしい。

そう切に願います。

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