ビル・ゲイツ初期の経歴を再検証 --- Part3
・レイクサイドスクールから超過分の利用料の支払いを求められたビル・ゲイツの両親たちは何も言わなかったのか。
そもそも、レイクサイドスクールが、ビル・ゲイツらの両親に超過分の利用料の支払いを求めたということ自体が書かれていません。母親会が資金を追加してくれたということが書かれているだけで、この時点での個々の親への使用料請求はされていません。したがって、疑問自体が無意味ということになります。
ただし、CCC社のPDP-10について、
P71:何にせよ、永遠に続くということはない。PDP-10のテストも、やがて終わる日がやってきた。それ以降、私たちもCCCに「一時間いくら」の料金を払わないとコンピュータが使えなくなったのだ。その頃には母親会の資金も底をついていたが、レイクサイドは、コンピュータの利用契約先をCCCに変更した。私たち一人ひとりには、専用のアカウントが与えられることになった。
P72:私たちは常に、使いすぎていないかを心配していなくてはならなかった。料金の請求書は毎月、両親に郵送されるのだが、ライト先生は、その前に、端末の上に利用料のランキング表を掲示した。利用料の多い順に名前を並べた一覧表である。いつも、「トップ3には入っていませんように」と祈っていた。月の利用料が78ドル(今の500ドルくらいにあたる)に達した時には、さすがに青ざめた。両親にどう説明すればいい?だが、ありがたいことに父は至極冷静に受け止めてくれた。「ちょっと多いな、ポール。これが勉強なのはわかってるけど、もう少し減らせないか」と言っただけだ。
P72: 親たちは今のところまだ耐えてくれているが、いずれ忍耐も限界になるだろうと私たちは感じていた。
と書かれています。つまり、
・最初はレイクサイドスクールが時間借りしたGE-635を時間借りしていた
・後になってCCC社のPDP-10を時間借りするように変えた
・CCC社のPDP-10に切り替えた際には、利用する生徒個人ごとに(つまり最終的には親が)支払いをするようになった
・その利用料が高くなって、ヒヤリとしたが、幸い、親からはとがめられなかった
ということがわかります。基本的に、ビル・ゲイツ達は、親から問題視されないよう、利用料には気を付けていたということもわかります。
このあたりの事情をきちんと調査せずに、
レイクサイドスクールが最初に時間借りしたマシンの超過利用料を、親に請求した
という誤った情報が出てきたものと思われます。
・CCC社とビル・ゲイツはどこでつながったのか
以下の記述があります。
P58:CCCの共同出資者の中に、レイクサイドの生徒の母親がいた。彼女が、「学校内にコンピュータを使える子たちがいる」という話を耳にしたのだ。
P58:フレッド・ライト先生は私たちをCCCの建物まで連れていって正式に紹介してくれた。コンピュータの管理責任者は、私たちに条件の提案をしてきた。利用者の少ない時間や営業時間外に、端末から好きなだけ、自由にコンピュータを利用してよい、というのだ。ただし、それには一つ、ルールを守らなくてはならない。「コンピュータがクラッシュするよう仕向けること」である。
P61:私たちは、いわゆる「ストレステスト」をしていたのだ。
CCCの出資者経由で、ビル・ゲイツらの話が伝わったことが、CCCとのつながりができるきっかけであることがわかります。また、先生にCCC社に連れて行ってもらった時点で、PDP-10を無料で使える提案がされたことがわかります。前述のように、
P59:GE-635を使っていた私たちが、PDP-10を使いはじめるというのは、いってみればカローラをフェラーリに乗り換えたようなものである。週一回、土曜日だけではとても足りなかった。私たちは平日の放課後も、バスに乗り、小さなブリーフケースを手にCCCに向かった。
と書かれているとおり、このような機会が得られた以上、もはやGE-635を使って母親会の資金を使う必要はなくなったのでしょう。
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