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ビル・ゲイツ初期の経歴を再検証 --- Part10

・ポール・アレンが進学した大学について

 ポール・アレンが進学した大学について、「パソコン創世記」には「地元シアトルのワシントン州立大学」と書かれています。
しかし、「ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト」には以下のように書かれています。
P86:ワシントン州立大学(地元では「ワズー」と呼ばれる)に入り、私は一人暮らしをするようになった。家から500キロも離れた土地での一人暮らしをはじめは喜んだが

P96: ビルがワシントン州立大学のあるプルマンにやって来た
ここからわかるように、ポール・アレンが進学したのは、地元シアトルの大学ではありません。

 少し話が分かりにくいので整理しておくと、ワシントン州には州が運営する大学が2つあります。
シアトルにあるUniversity of WashingtonとプルマンにあるWashington State Universityです。
どちらも州立大学ではありますが、日本語に訳すときには、University of Washingtonは「ワシントン大学」と訳し、Washington State Universityの方は「ワシントン州立大学」と訳すのが一般的です。

 英語での略称は、University of WashingtonがUWであり、Washington State UniversityはWSUです。
「地元ではワズーと呼ばれている」というのはWSUのことです。

 「ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト」でも、
P30: 父は、ワシントン大学のアソシエイト・ディレクターとなった。
とあるように、「ワシントン大学」と「ワシントン州立大学」を区別して書かれています。
 ただ、いずれも州立大学ではあるので、UWを「ワシントン州立大学」と訳すのが完全に間違いと言い切れるかというとそうではないかもしれませんが、紛らわしいので、「ワシントン大学」と訳すのが普通です。

 ポール・アレンが進学したのはWSUの方です。UWではありません。2つは同じ州内にありますが、500km程度離れており、東京と大阪くらい離れています。

 このあたりの事情を知らずに、「パソコン創世記」の著者が「ワシントン州立大学」という名前だけを見て「地元シアトルにある」と間違ってしまったものとみられます。

 ちなみに、話が少し先走りますが、参考文献の2次資料に挙げた本すべてで、「ワシントン大学」と「ワシントン州立大学」は区別して訳されています。
ですから、「ポール・アレンが地元シアトルのワシントン州立大学に進学した」という間違いは、「パソコン創世記」の著者によるものであり、参考文献に間違った内容が書かれているわけではありません。

 なお、ワシントン大学とワシントン州立大学は大学の格も結構違います。
大雑把に言えば、ワシントン大学は日本でいえば北海道大学という感じですが、ワシントン州立大学はナントカ県立大学という感じです。
ワシントン州立大学も悪い大学ではありませんが、名門校かと言われたら、そうでもないかなという感じです。
少なくとも、ビル・ゲイツが進学したハーバード大学とはかなりの差があります。
 後年、ポール・アレンがわりとあっさりと大学を中退しているのに対し、ビル・ゲイツはマイクロソフト創業後もハーバード大学の学生であり続け、ときどき講義を受けるためにボストンに帰っていたことも、このあたりの大学の格の違いが関係しているのかもしれません。

・学業の成績について

 ポール・アレンにせよビル・ゲイツにせよ、コンピュータに熱中していますが、学校の勉強の方は大丈夫だったのでしょうか。
これについては、以下の記述があります。
P66:両親は、私が学校で落ちこぼれるのではないかと心配していた。確かに、いくつかの科目で急激に成績が落ちてしまっている。
 そして、これに対する先生の反応として、通知表に以下のように書かれたことが記述されています。
P67:どうすれば自分の過ちに気づかせることができるでしょうか。私にはわかりません。ひょっとすると、彼のほうが我々よりも正しいのかもしれません。
 もう高校生であり、人格面や素行面で問題のないポール・アレンに対しては、先生も「最後は自己責任で」という対応であったのかもしれません。
しかし、2歳年下のビル・ゲイツに対して同様の対応がされたかは不明です。
推測になりますが、中学生のビル・ゲイツに対しては、先生も両親ももう少し厳しい対応を取ったのではないでしょうか。


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