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前回書きましたように、「PDP-1が、それまでは100万ドル以上していたのと同程度の性能のコンピュータを12万ドルで売り出し人気を博した」、という話には疑問が残ります。
これを、信頼できる一次資料をもとにして検証してみましょう。
・参考文献について
まず、一次資料とする文献を整理します。
主として以下の2冊の書籍を用います。
G.Bell et.al. Computer Engineering, A DEC view of hardware systems design, Digital Press,1978.
P.Ceruzzi, A History of Modern Computing, MIT Press, 2003.
前者はDECの中心人物であり、PDP-8やVAXなどのベストセラーの開発リーダーであったゴードン・ベル氏等が書いた書籍であり、DEC自体が出版している貴重な一次資料です。
後者は、スミソニアン博物館で司書を務めた人が書いた書籍であり、参考文献がきちんと書かれており信頼できるものと判断します。
なお、この2冊の書籍は英語の原書を手に入れて読んでいます。
次にゴードン・ベル氏のサイト
http://research.microsoft.com/en-us/um/people/gbell/
からたどれる資料を用います。
なぜ、これがマイクロソフト社のサイトにあるのかというと、ゴードン・ベル氏が現在マイクロソフト社に在籍しているからです。
以前に書いたように、マイクロソフト社の創業者の一人であるビル・ゲイツ氏はDECのコンピュータであるPDP-10でプログラミングを覚えましたし、WindowsはDECのOSであるVMSの子孫と言えます。
いわばDECはマイクロソフト社の産みの親という面があります。
そんなDECの立役者であるゴードン・ベル氏をマイクロソフト社が招聘するのは理にかなっています。
2015年2月現在で80歳になる同氏は、おそらく、マイクロソフト社内では名誉職的な存在であり、現場での開発には携わらず、給料もほとんど貰っておらず、本人もオフィスがあればそれで良いという感じだろうとは思いますが、一応マイクロソフトの従業員という位置づけではあります。
また、DECが最終的に吸収されたHP社のページにあるPDP-1に関する情報も一次資料とします。
具体的には
http://h50146.www5.hp.com/products/software/oe/openvms/history/digital/
からたどれる内容です。
次に、
http://pdp-1.computerhistory.org/
にあるComputer History Museumの情報です。
この博物館ではPDP-1の復元を試みており、サイト内にはDEC関係者に直接インタビューした内容などが掲載され、一次資料と言えるものが載っています。
最後は、DECの製品との比較に用いるIBMのコンピュータに関する情報を得るためのもので、IBMの公式ページに記載されているものを用います。
これは自社製品であるIBMのコンピュータに関する情報のみを信頼するものとします。
これ以外のもの、たとえばWikipediaなどは信頼性に疑問が残るため、一次資料としては使わないことにします。
ただし、上記の一次資料で確認できない情報の場合には、Web上のデータを参考までに挙げることとします。
その場合でも判断は留保し、確定的な情報としては扱いません。
では、これらの資料を基にして前述の疑問点に対する答えを探ってみます。