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DECのPDP-1は価格破壊をもたらしたミニコンピュータだったのか---Part3

  ・PDP-1は前例のない低価格で売り出されたコンピュータであったのか

 まず、前々回に書いた、第一の疑問である、PDP-1は破格の安さであったのかについて検証してみます。

 PDP-1自体の価格は、
http://research.microsoft.com/en-us/um/people/gbell/Digital/DEC%201957%20to%20Present%201978.pdf
のP3に

average configuration cost $120,000
と書かれています。
また、ゴードン・ベル氏他著の“Computer Engineering”のP134に
 a $120,000 computer
と書かれているほか、同書のP165にあるTable 5.には紙テープリーダー・パンチャー・4Kワードメモリー付の価格として120,000ドルと書かれています。
これに対し、同書のP168には、
 an initial cost of $250K of PDP-1
という記述があります。
これはおそらく、12万ドルというのが最低ラインで、現実に快適に使える水準まで周辺機器やメモリを付け加えると25万ドルになるということでしょう。
PDP-1に限らず、当時のコンピュータの価格としてはよくあることです。

 これに対して、当時の他のコンピュータの価格はどれくらいでしょうか。

 まず最上位機種でみてみましょう。この時期の最上位機種といえば、IBM7090です。
IBMのサイト http://www-03.ibm.com/ibm/history/exhibits/mainframe/mainframe_PP7090.html に情報があり、1959年の12月に発売され、月63,500ドルでレンタルされ、買い取りの場合には、2,898,000ドルであったと書かれています。
約300万ドルですから、確かに12万ドルのPDP-1はその1/10以下の価格と言えます。

 それでは最下位機種ではどうでしょうか。
http://www-03.ibm.com/ibm/history/ibm100/us/en/icons/mainframe/ を見ると、PDP-1と同時期に販売されていたIBM 1401という機種が月2500ドルでレンタルされていたことがわかります。
これは、最上位機種の入出力デバイスとしても使われていた最下位機種であったことが、“A History of Modern Computing”のP76に書かれている

Whether used alone or adjunct to a large computer, the 1401’s success
からわかります。
1401の買い取り価格はIBMのサイトには書かれていませんが、7090の買い取り価格/レンタル価格≒45.6をそのまま適用すると、2500×45.6=114,000ドルとなります。
11万4千ドルはPDP-1の価格とほぼ同じです。

 つまり、PDP-1は当時のIBMの最上位機種と比べると確かに1/10以下の価格であるが、最下位機種と比べるとほぼ同じ価格であったことがわかります。

 また、“Computer Engineering”のP139には、

The small, scientific computers from Bandix (G-15) and Librascope (LGP-30) had longer words and cost less than the PDP-1
と書かれており、IBM以外からも当時PDP-1より安い小型コンピュータが販売されていたことがわかります。
ちなみに、G-15とLGP-30の価格は、“A History of Modern Computing”のP42,P43に書いてあり、それぞれ、45,000ドルと30,000ドルであったということです。
PDP-1の三分の一から四分の一の価格です。

 このように、PDP-1は前例のない価格で売り出されたコンピュータではなかったということがわかります。



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