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・PDP-1は人気を博したのか
次に、以前に挙げた第三の疑問である、PDP-1は人気を博したと言えるかについて検証してみます。
第二の疑問点である、性能面の件は一連の記事の最後で扱います。
まず、PDP-1自体が何台売れたかを一次資料を基に確認します。
http://research.microsoft.com/en-us/um/people/gbell/Digital/DEC%201957%20to%20Present%201978.pdf
のP3には、
nearly all 53 PDP-1’s are still in useと書かれており、53台が売れたことがわかります。
In November 1960, the first PDP-1 computer was delivered. This machine and the 49 other PDP-1s that followed established Digital Equipment Corporation in the computer business.と書かれており、正確に50台と認識されていることがわかります。
一次資料としては使えませんが、Wikipedia 英語版のPDP-1に関する項目には、出典は不明ながら、
In 1962, DEC donated the engineering prototype PDP-1 to MITという記述があり、余剰となったプロトタイプ機をMITに寄贈したことが書かれています。
The cathode ray tube was integrated into the console, as shown in Figure 9, but this design was subsequently dropped for cost reasons.と書かれています。 つまり、PDP-1/A以外ではCRTディスプレイは別売りだったわけですが、ゲームに使うという点ではCRTディスプレイは必須であり、PDP-1/AがMITに寄贈されたとすれば比較的合理的に思えます(ただし、明確な証拠はありません)。
本記事では、PDP-1の売り上げ台数は、だいたい50台程度ということにしておきます。
さて、PDP-1が売れたのは50台程度であるとして、同時期の同価格帯のコンピュータはどれくらい売れたのでしょうか。
先に取り上げた、同価格帯のIBM 1401ですが、
http://www-03.ibm.com/ibm/history/ibm100/us/en/icons/mainframe/
には、10,000台が売れたと書かれています。
しかも、発売開始から5週間で5200台の注文が入ったとあります。
PDP-1の200倍も売れたわけです。
こういったことを踏まえると、当時PDP-1はあまり売れなかったというのが実情であったように見えます。
このあたりのことは、ゴードン・ベル氏他著の“Computer Engineering”にも触れられており、P139に
There was some market credibility problems which prohibited PDP-1 sales.および
Potential buyers doubted that a company with only 100 employees and less than a million dollars in sales could be a reliable and long-lived computer supplier.と書かれており、当時、市場におけるDECの信頼は十分ではなく、それがPDP-1が売れなかった要因の一つであると分析されています。
“A history of modern computing”のP128にも
It was hardly a commercial success,と書かれています。
ポッと出のベンチャー企業の最初の製品を買う人は少なかったというのは納得できる話です。
このことから、PDP-1が、お世辞にも、売れた・人気を博したと言える状態ではなかったことがわかります。