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DECのPDP-1は価格破壊をもたらしたミニコンピュータだったのか---Part5

  ・発売年と売り上げ台数について

 第四の疑問である、発売年と売り上げ台数の件を検討します。
売り上げ台数については先にみたとおり、50台程度です

 ちなみに、だれが購入したのかというと、
“Computer Engineering”のP139に

Lawrence Livermore Laboratory, Bolt Beranek and Newman (BBN), Atomic Energy of Canada, International Telephone and Telegraph (ITT)
と、いくつかの名前が挙げられています。また、同じページには
Nearly half of the PDP-1s constructed were used, as the ADX 7300, for the ITT message switching application.
と書かれており、これらから、顧客はかなり限定されていたことがうかがえます。

 発売年については、“Computer Engineering”のP136に

Bolt, Baranek, Newman (BBN), a consulting firm in Cambridge, Massachusetts, purchased the first production machine (1/B) for delivery in November 1960.
と書かれており、最初の出荷が1960年11月であったことがわかります。
http://h50146.www5.hp.com/products/software/oe/openvms/history/digital/comp/index.html にも、1960年11月出荷と明記されています。
ですので、発売年は1960年で決まりです。

 では、なぜ1959年や1961年という記述がネット上にみられるのでしょうか。
単なる勘違いや不注意・調査不足という面が大きいとは思いますが、それ以外にも理由があるかもしれません。

 まず、“Computer Engineering”のP134には

 The PDP-1 engineering prototype (1/A) is shown in Figure 8. It was first shown in Boston at Eastern Joint Computer in December 1959.
と書かれています。また、
http://research.microsoft.com/en-us/um/people/gbell/Digital/DEC%201957%20to%20Present%201978.pdf には、PDP-1が1959年の項目に記載されており、
The first PDP-1, delivered in December
という記述があります。
1959年の12月にはプロトタイプがお披露目されただけで、製品が発売になったわけではないのですが、そのあたりをきちんと理解しないまま書かれたものがあるかもしれません。

 また、“Computer Engineering”のP134には

A third machine, similar to 1/A and 1/B, was constructed for internal use.
と書かれており、PDP-1/B以降に作られた最初のものは内部的に使われたものであることがわかります。
となると、BBNに売った1台以降のものは1961年以降に販売されたものという可能性が高くなります。

 実質的に購入できるようになったのが1961年であったことが、1961年発売という誤解を生んでいる可能性はあります。



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