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UNIX初期の歴史再検証 --- Part2

参考文献

 まず、参考文献を明らかにしておきます。
幸いにしてUNIXに関しては、バージョン1以降のマニュアルや一部のソースコードが存在しており、開発者自身が書いた記事も存在します。
これらを1次文献とします。

 次に、開発当時にUNIX開発者の周辺にいた人、あるいは関連性の高いグループに所属していた人が書いた記事があります。
これらを2次文献とします。

 さらに、UNIX開発者との関連性が明確でない人が、後の時代になって書いたものを3次文献とします。

 具体的には以下のものを用います。

1次文献
UNIX プログラマーズマニュアル
 リッチーのサイト(http://cm.bell-labs.co/who/dmr/)や、古いUNIXの保存活動を行っているThe UNIX Heritage Society (TUHS http://www.tuhs.org/Archive/Distributions/Research/)などから入手できます。
各バージョンのマニュアルの一部をPDF化したものが入手できるので、こちらで参照できるようにしてあります。
 バージョン6と7のマニュアルには、マニュアル本体に加えて、補助資料がついています。
これらの補助資料は、UNIX自体のソースに含まれており
http://www.tuhs.org/Archive/PDP-11/Trees/V6/usr/doc/
http://www.tuhs.org/Archive/PDP-11/Trees/V7/usr/doc/
にあります。これらの大部分は、各バージョンのマニュアルとして書かれたわけではなく、独立に書かれた資料が添付されている場合が多いのですが、セットアップ情報
http://minnie.tuhs.org/PUPS/Setup/v6_setup.html
http://minnie.tuhs.org/PUPS/Setup/v7_setup.html
だけは各バージョンに固有の内容を記載しているので、1次資料に含め、他のものは次に述べる1.1次資料として扱います。
補助資料の一部をPDF化したものが存在するので、こちらに置いておきます。

1.1次文献
 http://www.bell-labs.com/usr/dmr/www/にあるリッチー自身が書いた文書、あるいはリッチーが共著者になっている文書のうち上記1次資料に含まれないもの。
バージョン6と7のドキュメントの補助資料。

 これは1次文献として扱うのが妥当ですが、リッチー氏単独で書かれたものなどが多くあり、UNIX開発者たちの相互の査読を経ていない可能性があること、文書内に整合性が取れないように見える箇所や解釈を要する箇所があることから、1.1次文献とし、1次文献と一応区別して扱います。
ただ、1.1次文献が1次文献と比べて信頼性が顕著に低いというわけでもありません。あくまでも、状況を段階的に整理するための分類と理解してください。

2次文献
バークレー版UNIXの20周年を記念して1999年にMarshall Kirk McKusickが書いた文書:http://www.oreilly.com/openbook/opensources/book/kirkmck.html
同氏の自己紹介http://www.mckusick.com/history/index.htmlによると同氏がUNIXに関わるようになったのは1979年からで、V6のころまでのUNIXに関する記述は伝聞情報と考えられます。
記述された時期は、UNIX開発当時ではありません。
しかし、バークレーグループの一員であることから、2次文献に含めています。

3次文献
・書籍「A quarter century of UNIX」
 UNIX誕生から四半世紀が経過したことを記念して作られた本です。
当時の開発者や関係者に広く取材を行い、生の声を記載しています。
UNIXの歴史について記述する際に、この本が参考文献に挙げられることが多いようです。
しかしながら、この本の作者はUNIX開発当時の当事者ではなく、また取材の時期も1994年ごろであり、個々の取材に応じた人の記憶がどれだけ確実か不明です。
また、当事者への取材の記事以外に、出典不明の記述があり(おそらく著者が独自に記述したもの)、その内容が上に述べた1次文献の記述と矛盾するなど、信憑性に疑問を抱かせる箇所があります。
書籍の記述も散漫で、整理されている感じではありません。
同窓会的な書籍ですので、こんなものと言えばそれまでかもしれませんが、1次文献や2次文献として使える品質ではないです。
 なお、今回のブログの執筆に当たって、私は、この本の英語の原書を読んでいます。日本語に翻訳されたものも読みましたが、意味の取れない箇所が多くあり、原書を読むと全く反対の内容などが書かれているため、日本語版は使えないと判断しました。

http://www.cs.kuleuven.be/museum/pdp/unix-E.html
UNIX開発グループとは無関係だが、おおむね同時代にUNIXの移植を試みたと思われる人の書いた文書です。

 参考文献は以上です。1次資料から順にあたり、各段階でどこまで明らかにできるかを見て行きます。
Wikipediaやネット上にある他の情報は一切用いません。



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