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前回まで、PDP-1の真実について一次資料をもとに解き明かしてきました。
DECのPDPシリーズはPDP-1に始まり、PDP-16まであります。
PDP-1についていろいろ見てきましたので、他のPDPシリーズのコンピュータについても、売り上げや価格等を調べてみましょう。
まず、PDPシリーズですが、PDP-2は24bitマシンとなるべく番号だけ確保されたものの設計されず、PDP-13は不吉な番号と言うことで欠番になりました。
PDP-3は36bitマシンとして設計はされたもののDEC自身は製造せずに1960年にScientific Engineering Instituteによって製造されました。
また、PDP-14は12bitの制御用マシンで一般的なコンピュータとは異なります(ここまで出典はゴードン・ベル氏他著の“Computer Engineering” P141, P203)。
PDP-16も制御用で後にRTM(Register Transfer Modules)と呼ばれるようになったものです(出典はhttp://research.microsoft.com/en-us/um/people/gbell/digital/DEC%201957%20to%20Present%201978.pdf)。
このため、一般的には、PDP-1,4,5,6,7,8,9,10,11,12,15がDECのPDPシリーズのコンピュータと言われています。
このうち、一般にミニコンピュータと呼ばれているものは、PDP-8とPDP-11のみです。
PDP-6とPDP-10は、IBMのメインフレームに対抗すべく作られたもので、価格も、PDP-11などより1桁高いものです。
つまり、DECはミニコンピュータ専業メーカではありません。
ただ、よく売れたのはPDP-8とPDP-11であり、実質的にミニコンピュータによって成り立っている会社ではありました。
PDPシリーズの番号は基本的には小さい番号のほうが早く発売されたものという傾向がありますが、PPD-11よりもPDP-12やPDP-15のほうが発売が早いなど例外もあります。
これは企画された順に番号が振られたけれども、実際に製品として世に出るまでに時間を要したものもあり、番号が入れ替わってしまったということのようです。
また、PDP-8のようにシリーズ化されて、PDP-8/I, PDP-8/Eなどの多くの機種が出たものは、PDP-12などの後継機種が出ても、PDP-8シリーズの後継型番も並行して作られ、たとえば、PDP-12は1969年6月発売ですが、PDP-8/Eは1971年発売であるなど、さまざまな番号の機種が並行して販売されていました。
このPDPシリーズの売り上げに関して、Wikipediaなども含めて参考にされていることが多い文献が、D.Miller著の“OpenVMS Operating System Concepts”という本です。
私も実物を手に入れて読んでおり、10章の、“History of Digital Operating Systems”のP452にあるFigure 10.2にPDPシリーズの売り上げが書かれています。
これをまとめると、以下の表1になります。
機種名 | 売り上げ台数 |
---|---|
PDP-1 | 50 |
PDP-4 | 45 |
PDP-5 | 1,000 |
PDP-6 | 23 |
PDP-7 | 120 |
PDP-8 | 50,000 |
PDP-9 | 445 |
PDP-10 | 700 |
PDP-11 | 600,000 |
PDP-12 | 1,000 |
PDP-15 | 790 |
ただし、以前にPDP-11の売り上げに関する話や、VAX/VMSに関する話で取り上げたように、この書籍は、内容に不自然な点が多く、かつ参考文献が全くあげられておらず、提示されているデータの根拠が不明です。
また、同じくネット上のデータとしてしばしば参考にされるサイトである、http://homepage.cs.uiowa.edu/~jones/pdp8/faqs#PDPには以下の表2が書かれています。
機種名 | 売り上げ台数 | 価格 |
---|---|---|
PDP-1 | 50 | 120,000ドル |
PDP-4 | 45 | 60,000ドル |
PDP-5 | 1,000 | 27,000ドル |
PDP-6 | 23 | 300,000ドル |
PDP-7 | 120 | 72,000ドル |
PDP-8 | 〜50000 | 18,500ドル |
PDP-9 | 445 | 35,000ドル |
PDP-10 | 〜700 | 110,000ドル |
PDP-11 | >600000 | 10,800ドル |
PDP-12 | 725 | 27,900ドル |
PDP-15 | 790 | 16,500ドル |
この表では、参考文献として、ゴードン・ベル他著の“Computer Engineering”と、“Computers and Automation”という雑誌が挙げられているものの、PDP-11の売り上げに関してはこれらの参考文献には書かれておらず、上述の“OpenVMS Operating System Concepts”を参考にしている可能性があることや、PDP-5の売り上げを表2では1000台としているのに対し、同じページの下のほうには116台と記載しているなど矛盾が見られます。
そこで、PDPシリーズの売り上げ、価格、発売時期に関して、一次資料から明らかにしてみたいと思います。