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誤りのあるサイト・書籍など --- Part5

 今回は、脇英世氏の最近の著作である、「ビル・ゲイツI」をとりあげます。

 以前と一部重複しますが、公正を期するため、先に以下のことを申し上げておきます。
 ただ、全く間違いがないというわけではありません。
 本ブログに関係するのは、ビル・ゲイツの初期の経歴についてであり、冒頭の部分、具体的には、第3章のはじめのあたりまでです。
 間違いといっても、基本的に、書籍の大筋とは関係ない些細なことですが、以下の点が挙げられます。

 P21に、
1968年秋、シアトルのユニバーシティ・ディストリクトのシアトル市ノースイースト12番アベニュー5003番地に、コンピュータ・センター・コーポレーションというタイムシェアリング会社ができた。
現在はYMCAが入っている。
と書かれていますが、以前に書いたように、CCCのあった場所はノースイースト12番アベニュー5003ではなく、

 4041 Roosevelt Way N.E.

です。正しい位置に現在YMCAがあるわけでもありません。

CCCがあった場所では、現在、
http://www.seattletimes.com/business/real-estate/vulcan-announces-udistrict-apartment-project/
に書かれている、ポール・アレンの運営する企業による建設が進んでいることがストリートビューで確認できます。

 はっきり違っているといえるのは、以上の1点だけです。
 上記新聞記事が出たのは、「ビル・ゲイツI」の著者の方が原稿を書き終えた後でしょうから、著者の方は現在は正しい住所をご存知かもしれません。


 この他には、おそらく誤植だろうと思われるものに、以下のものがあります。

 P4に
英語の場合は、ユニバーシティ・オブ・ワシントン(略称UW)とワシントン・ステート・ユニバーシティ(略称WU)で、区別しやすいが、日本語の場合は間違いやすい。
と書かれていますが、ワシントン・ステート・ユニバーシティの略称はWSUでありWUではありません。

 P19に
ケネス・アレンは、GIローンを使ってワシントン州ウェストウッドに家を建てた。ワシントン大学のすぐ北側である。
と書かれていますが、「ウェストウッド」ではなく「ウェッジウッド」です。
「ぼくとビル・ゲイツとマイクロソフト」のP24に
父が退役軍人向けのローンを借りて家を買い、私たち一家はウェッジウッドへと移り住んだ。
と書かれています。また、以前のブログに書いた地図を見ればわかるように、この場所はワシントン大学の北側ではありますが、2km程度離れており、「すぐ北側」とは言えない感じです。

 (補追:著者の脇様からご連絡を頂きました。上記の点は重版時に書き換えていただけるとのことです。)

ちなみに、地名に関しては、ビル・ゲイツの実家の場所についてP13に
ビル・ゲイツが小学校の4年生になった頃、ゲイツ家はシアトルのローレルファースト地区に広々としたモダンな家を建てた。
と書かれています。
ここで書かれている、「ローレルファースト」とは、英語の表記ではLaurelHurstです。hの音はハ行の仮名で表記するのが一般的であり、2次文献でも「ローレルハースト」と書かれています。
「ファースト」と表記するとどうしてもfirstを連想してしまうので、適切な仮名表記とは言えない気がします。
P10にも「ローレルファースト」の表記があることから、誤植というわけでもなさそうです。
英語の音を仮名でどのように表記するかには任意性がありますので、これを間違いとは言えませんが、誤解を招きかねない表現ではあります。(P437では「ローレル・ハースト」や「ローレルハースト」の表記になっています。)


 ほかに、間違いとは言えないまでも、誤解を招きかねない記述として、以下の点が挙げられます。

 P37に
1974年初夏に、シアトル市とキング郡の技術局の職員に向けて、ビル・ゲイツは自宅のキッチンでデモをおこなった。結果は悲惨な失敗であった。ビル・ゲイツは母親に頼んだという。「お母さん、この人に言ってやってよ、これは本当に動くんだって」
という記述があります。
以前に書いたように、これを読めば、これはビル・ゲイツが小学生かせいぜい中学生前半くらいまでの、少年時代のほほえましい話と思うでしょう。
しかし、これは、ビル・ゲイツが大学生の時の話です。
母親に助けを求めても意味がないことくらいわかるはずであり、不自然です。
この時点で、ビル・ゲイツはISI社での仕事などいくつかのビジネスに関わった経験があり、普通の大学生ではありません。
ましてや、負けん気の強いビル・ゲイツです。人前でこういうことを言うでしょうか。
以前に書いたとおり、これは、ビル・ゲイツの母親であるメアリー・ゲイツが、事実を膨らませて面白い話にして記者に語ったものと思われます。
そのまま事実ではないでしょう。
ただ、何が事実であるかを示す確実な資料があるわけではありません。

 詳細に事項を分析している脇氏が、このエピソードを不自然と思わなかったのは意外な気がします。ビル・ゲイツの父親が書いた本に同様のことが書いてあるので、それを尊重したのかもしれません。
 

 P22に
DECとCキューブドの契約では、試運転期間中はバグがなくならない限り、CキューブドはDECに利用料金を支払わなくてもよかった。
書かれています。「試運転期間中は」とはっきり書かれているので、この記述は間違ってはいませんが、あくまでも導入直後の試運転期間の話であり、バグがある限りずっと利用料金が発生しないわけではありません。試運転期間がいつまでと明確に定められていたわけではないようですが、導入直後の短い期間と解釈されていたようで、以前に書いたように、DECから催促を受けたりしています。


 本ブログに関係する第3章のはじめまでの範囲では以上です。
 この範囲以外の箇所にも、間違いはあります。たとえば、P266とP268にTENEXを改良してTOPS-10ができたと書かれていますが、これはTOPS-20の間違いです。 TENEXがTOPS-20になったことは比較的よく知られていることであり、http://tenex.opost.com/hbook.htmlでも確認できます。 作者の方は、DEC社の製品への関心は低いのでしょう。
 本書の内容で、私が間違いを指摘できるだけの知識を有しているものはごく一部ですので、本全体で見ればそれなりの数の間違いがあるかもしれません。

 また、この本は、後ろの3分の1あたりになると、以下のような不備が相当数出てきて、推敲不足が目立ちます。
同様の傾向は、続編である「ビル・ゲイツII」でも見られ、例えば、キーワードであるはずの"OS2"という言葉が説明なしに出てくるなど、全体に説明不足や推敲不足が目立ちます。
 後ろの方の原稿を書く際に締め切りに追われてやっつけ仕事になったのか、過去の文章を使いまわしてつぎはぎした結果なのか、マイクロソフト社の歴史の本流からやや外れる内容への関心が低いのか、そのあたりの理由はわかりませんが、今後の改訂時に直るといいなと思います。

 「ビル・ゲイツI」に関しては以上です。



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